まちの文化財(135) 名草神社の四猿彫刻

更新日:2019年11月14日

名草神社三重塔

名草神社三重塔

聞かざるの彫刻

聞かざるの彫刻

動かざるの彫刻

思わざるの彫刻

 

国指定重要文化財の「名草神社三重塔」は、もともとは「出雲大社三重塔」です。江戸時代前期、出雲大社本殿の造営に際して妙見杉を提供した縁で、寛文5年(1665)、養父市八鹿町の妙見集落に移転しました。

三重塔の最上部にある3層目の軒下には、4隅に猿の彫刻があります。彫刻された猿は、目をおさえる、口をおさえる、耳をおさえる、左手を頭に添えるという4匹です。

この彫刻は三重塔を但馬に移築した寛文5年の制作です。但馬地域では最古の猿の彫刻であり、県下でも最古級にあたる彫刻です。

一般的には「見ざる、言わざる、聞かざる」という三猿の教えが有名です。江戸時代に人生を健やかに生きるための教訓として、庶民の間に三猿の教えが広まりました。鎌倉時代の『沙石集』には「見ざる、言わざる、聞かざるは世にあるが、思わざるをたもてば、三のさるはたやすいことだ」という話が載っています。

神社や寺院には中国哲学を題材とした物語の彫刻が多くあります。名草神社本殿にも鶴仙人(つるせんにん)・亀仙人・琴高仙人(きんこうせんにん)の彫刻があります。

『論語』には「礼にあらざれば視ることなかれ、礼にあらざれば聴くことなかれ、礼にあらざれば言うことなかれ、礼にあらざれば動くことなかれ」の教訓があります。論語にはもともと4点の教訓が書かれています。つまり、三猿の教えは、論語に書かれた四猿の教訓が転化したと考える説があります。論語を根拠として考えると4匹目の猿は、動かざるが有力となります。

名草神社三重塔にある四猿の彫刻は、江戸時代前期に作られた大変珍しい四猿です。兵庫県でも古いものであり、彫刻によって中国哲学の教訓を示しています。

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