まちの文化財(44) 福王寺の阿弥陀如来立像

更新日:2019年11月15日

衣の袖が写実的な仏像

           衣の袖が写実的な仏像

光背をうけて台座にたつ仏像

        光背をうけて台座にたつ仏像

 

大屋町中にある福王寺の木造阿弥陀如来立像は、昭和60年3月に兵庫県指定文化財となりました。県下でも美術史的な価値は高く、鎌倉時代初期に造られたバランスのよい、姿の美しい仏像です。

この仏像には、五つの特徴があります。第1は平安時代後期の丸顔を主体とした顔に、鎌倉時代の特徴であるやや面長で厳しい表情が加わっています。第2は身体の着衣が太ももでY字形の衣紋の形式を表現し、衣の袖を薄く長くなめらかに彫刻しています。平安時代後期の特徴を示します。第3は高さが97センチメートルあり、三尺阿弥陀と呼ばれる鎌倉時代から始まる規格で作られています。第4は水晶を入れて目を表現する玉眼ではなく、目を彫刻して表現する彫眼で作られています。第5は仏像の表面は、下地の上に漆を塗って金箔をはる漆箔法が行われています。 こうした特徴を備えた仏像は、県下でも数体しか発見されていません。

しかし近年になって漆箔の剥落が進み、寄せ木となっている仏像の矧ぎ目がゆるみ、手や足先の指も欠損していました。さらに台座の部品や光背の部品も失われていました。

このため兵庫県と養父市の教育委員会補助事業として修理が実施されました。修理は福王寺が財団法人美術院に委託し、京都国立博物館の中にある美術院修理所で実施しました。9ヶ月をかけた修復が完成し、4月11日に本堂に納められました。

この阿弥陀如来立像は、観音菩薩立像と勢至菩薩立像を従えた三尊形式になっています。観音菩薩立像と勢至菩薩立像は、江戸時代中期にあたる享和8年(1723)に作られました。この時に阿弥陀如来立像も修理され、台座や光背も作られました。今回の修理は、285年ぶりの大修理となりました。

福王寺の阿弥陀如来立像は、鎌倉時代に始まる三尺阿弥陀像の希少な形態で、平安時代と鎌倉時代の様式をあわせもつ兵庫県を代表する貴重な仏像です。

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