養父市の先人を学ぶ

更新日:2019年11月28日

池田草庵と青谿書院

青渓書院

青渓書院

 

養父市の宿南には、江戸時代の終わり頃、池田草庵が開いた青谿書院(せいけいしょいん)という学校がありました。現在も建物や書物などが兵庫県指定文化財として保存されています。青谿書院は儒学という学問を学ぶための私立の学問所(私塾)です。青谿書院では7歳から20歳くらいまでの若者が生活を共にしながら学びました。青谿書院とその前身となった立誠舎という学問所で池田草庵に学んだ人は673人になります。池田草庵は、陽明学を探究する優れた学者として、約150年前に活躍した人物です。日本がアメリカによって開国をせまられ、江戸幕府が倒されるという明治維新の時代、自らが正しく生きること、門人を正しく学ばせること、正しい国の未来を示すことを真剣に探究しました。

 

日本画家の小林礫川

太公望の襖絵

太公望の襖絵

 

 

小林礫川(れきせん)は、天保4年(1833)、現在の東京都文京区小石川町で生まれました。本名は小林謹之助、雅号は礫川、著名には延安、酔人、瓢中逸士なども使いました。画家の板谷桂舟から土佐派の画法を学び、大和絵を得意としました。文久3年(1863年)、礫川は30歳の時に出石を訪れ、出石藩の多田弥太郎に漢学を学びました。

明治初めには、高柳の大庄屋福田宗右衛門の招きで、高柳村に住みました。礫川の活躍した時代は、江戸から明治へ移り変わる過渡期でした。 しかし、時代の波に流されることなく日本画を描き続け、明治15年、第1回内国絵画共進会に出品し、明治37年(1904年)72歳で生涯を閉じるまで、養父市を中心とした但馬地方に多くの日本画作品を残しました。

また、礫川は晩年、明治22年から始まった高柳の進智共会という青年の夜学会で漢文を教え、その様子を自ら絵に描いています。日本画家としてだけでなく文人としても、養父市で活躍した先人です。

榧の木と北垣国道

北垣国道の生家跡とヒダリマキガヤ

北垣国道の生家跡とヒダリマキガヤ

 

 

 

養父市能座にある国指定文化財「建屋のヒダリマキガヤ」の場所は、北垣国道の生家跡です。北垣国道は、天保7年(1836)に能座村に生まれました。幼少のころから学問を好み、7歳の時には立誠舎の池田草庵の下で漢学にいそしみ、青谿書院では塾頭になりました。

文久3年(1863)、国道は平野国臣、南八郎たちと共に尊王攘夷をかかげ、生野の変を企てましたが失敗し、鳥取藩へ逃れました。その後、明治維新で活躍し、明治4年(1871)鳥取県少参事となり、明治14年(1881)には45歳の若さで第3代京都府知事に就任しました。

琵琶湖と京都を結ぶ琵琶湖疏水は、国道の手腕により建設されたものです。琵琶湖疏水は飲料水や工業用水の確保と同時に、日本初の水力発電所を建設し、そこで発電した電気によって日本初となる市電を走らせました。その功績を称え、明治35年(1902)に琵琶湖疏水のほとりに銅像が建てられました。

京都府知事退任後は、北海道庁長官として鉄道や港湾の整備を推進し、枢密委員顧問官や貴族院議員なども務めました。北垣国道は、明治時代の日本を支えた偉大な政治家の一人です。

大屋の養蚕。上垣守国と小倉寛一郎

養父市大屋は、江戸時代から昭和まで兵庫県下で最も養蚕が盛んな町で、関西地方で最も養蚕文化が栄えました。そんな大屋の養蚕を支えた人物に、上垣守国と小倉寛一郎がいます。

 

上垣守国記念館

上垣守国記念館

 

上垣守国

上垣守国は宝暦3年(1753)大屋の蔵垣村に生まれました。その頃は、但馬の養蚕は衰退しており、大屋の養蚕も良い繭が生産できず停滞していました。18歳になった上垣守国は、蚕種の本場である陸奥国伊達郡福島などに往来し、そこで手に入れた蚕種を持ち帰り、但馬・丹後に広めて蚕種改良に尽力しました。また、享和3年(1803)に発刊した「養蚕秘録」は、近世においてとても優れた蚕業図書でした。後にシーボルトが日本からオランダへ持ち帰り、フランス語に翻訳されたものがヨーロッパで出版され、日本だけでなく、ヨーロッパの養蚕技術の改良にも貢献しました。

小倉寛一郎

寛政5年(1858)に大屋の古屋(現在の和田)で小倉寛一郎は生まれました。明治10年(1877)19歳のときに、周囲の反対を押し切り古屋に独力で「盛業製糸場」を創設しました。座繰式製糸、木製ケンネル器械製糸など、様々な製糸法を試みました。そして、明治13年(1880)群馬県富岡製糸場を視察して、渋沢栄一から器械製糸を学びました。明治14年5月に但馬では第1号となる12馬力の蒸気動力によるボイラーを設置し、器械製糸を開始しました。

 

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