樽見の大桜の樹勢回復
樽見の大桜の治療
ジャングルジムに支えられた枝
樽見の大桜は、樹齢千年ともいわれる古木です。大きな幹の中心部は腐って空洞になっています。このため樹木が自分の重量を支えられなくなり、幹が縦方向に裂けて割れ目が入っています。また大きな枝も枯れています。
対策として昭和47年、大屋町が大桜付近の土地1,000平方メートルを買い上げ、樹木を伐採して日当たりを良くしました。また昭和61年には10,000平方メートルに土地を拡大し、大桜に支柱を設置しました。そして平成9年から樹木医による樹勢回復を進めています。
樹木医の発案により、大桜全体の樹勢が著しく衰退していたことから、大桜を支えるためにジャングルジム型の支柱を設置しました。大桜を治療する時の足場としても利用されています。
樽見の大桜を復活させる取り組みは、樽見区の樽見の大桜保存会をはじめ、兵庫県下の樹木医、神戸大学の先生、養父市大屋町の植物研究者など多くの人々が尽力しています。
幹の間から出現した不定根
地面に到達した不定根
樹木医による治療
大桜の樹勢回復のための治療のポイントは7点あります。
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桜の幹が自力では枝を支えられないことから、鉄製のジャングルジム支柱を作って樹木を支えています。
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桜の周囲に柵を設置して立入を禁止し、根の付近の土を見学者が踏み固められないための対策をとっています。土が固まって根が枯死することを防止しています。
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専用の鉄製の管に水圧20キログラムをかけて、深さ約1mまで水や肥料を地面に注入します。鉄製の管を抜いた穴にはスーパーソイル(粒状改良土)を入れて土壌改良を実施しています。樹木医の間で、グラニューインジェクション法と呼ばれる樹勢回復のための方法です。
4月初旬 大桜の開花状況
3月初旬 大桜の保護作業
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定期的に水を与える自動灌水装置を設置しています。樹勢維持には特に夏場の渇水期に水をやることが大切になります。
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腐朽部等を治療し、枯れ枝は切除して取り除きます。枯れ枝を放置すると腐れが広がり、腐朽菌(ふきゅうきん)の発生につながります。
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大桜の周囲を網で囲って鹿の食害防止対策をしています。養父市では鹿が異常繁殖しており、現在は鹿の食べないミツマタ等の植物が生き残っています。桜の花の開花する時期に、ミツマタの黄色い花も咲いています。全体として植物を育てる土の力が衰えています。
ジャングルジム支柱
不定根の育成状況の点検
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不定根(ふていこん)の育成です。地上から数m上にある幹の間から栄養を求めて、春に細いヒゲ根が出現します。これが不定根です。しかし夏には乾燥して枯れてしまいます。このため不定根にミズゴケを巻いて水をやりながら、地面に到達するまで育成します。現在、5本の不定根が地面に到達しました。幹や枝に養分を届けるバイパスとなっています。この治療方法によって、新しい枝が伸びて花の量が増大しました。
まとめ
大桜の治療は、平成9年から樹木医による治療が始まり、現在も続いています。多様な方法を組み合わせて、根を育てる努力をしています。調査を実施すると、枝が枯れた部分では根も枯れています。つまり根を養えば樹木は生きる力を回復します。樹勢の衰えた古木になると樹勢回復は簡単なことではありませんが、樹木の生きる力が回復するように取り組んでいます。
(参考文献)
『国指定天然記念物 樽見の大ザクラ保護増殖事業報告書』平成11年大屋町教育委員会発行
『国指定天然記念物 樽見の大ザクラ記念物保存修理事業報告書』平成17年養父市教育委員会発行
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更新日:2022年04月13日