日本西南限のミズバショウ

更新日:2019年11月22日

西日本で唯一の自生地

ミズバショウ

ミズバショウ

ミズバショウの日本における分布の西限は、福井県勝山市の取立山にある取立平です。また南限は岐阜県郡上市高鷲町の蛭ヶ野高原です。白山という高い山の南西部から南に位置しています。そこから190キロも西で生育しているのが、養父市加保坂のミズバショウです。

このため加保坂湿地のミズバショウは、日本のミズバショウ自生地の西南限にあると言われています。しかしミズバショウが自生できる自然環境の限界は、やはり福井県の取立平から岐阜県の蛭ヶ野高原です。

加保坂湿地にあるミズバショウだけがこうした分布圏の外側にある点のような形で、生育しています。これを隔離分布と言っています。加保坂のミズバショウは西日本で唯一の自生地となっています。

氷ノ山は標高1510メートルある兵庫県の最高峰の山です。日本海の厳しい寒気の影響をうける豪雪地帯にあります。西日本でも氷ノ山だけに、氷河期の生き残りといわれる北方系の植物が幾つも生育しています。加保坂もそうした氷ノ山山系の一部にあたります。関西には大山や大峰山などの有名な山がありますが、氷河期の植物を守り育てている山は、養父市の氷ノ山山系だけです。

自生地を考える

ミズバショウ自生地

ミズバショウ自生地

福井県の取立山から190キロメートルも離れた加保坂だけにミズバショウの自生地がみられることから、本当に自生地であるのかどうかが、大きな問題となりました。

加保坂湿原の土壌にふくまれる花粉分析調査が、昭和46年に矢野悟道先生(神戸女学院大学教授)たちによって実施されました。深さ100センチメートルの位置で、アイソトープC14による年代測定では、今から8190年前を中心として±115年という年代が出ています。この位置で、ミズバショウと考えられるサトイモ科の化石花粉が、全体の花粉の6%という高い数値で確認されました。この結果、1万年前の氷河期から生きのびてきた自生地の可能性が高いと判断されました。

大屋町史自然編の中で、加保坂湿原にミズバショウが残った理由として三つの特徴を指摘しています。第1にこの場所が兵庫県下は夏季低温域にあたっており、しかも冬季には積雪が多い地域である。第2に湿原が傾斜していて堆積物が流出するために、新しい堆積が進まずに、泥炭が露出した湿潤な生育条件が持続されてきた。第3に加保坂湿原が、蛇紋岩地帯であるために貧養土壌で、農地や植林などの人為的な環境変化が少なかった。つまり人間が開墾をしなかったので自然環境が残された、ミズバショウも成育が続いたということです。

蛇紋岩

蛇紋岩

ミズバショウ公園からの眺め

ミズバショウ公園からの眺め

西日本では他の地域ではミズバショウは自生していません。なぜ加保坂湿原で現在まで生育できたのでしょうか。ミズバショウの自生地の限界点の外側で、幾つもの良好な自然環境の条件が重なり合って、ミズバショウが生育することができたと考えるのが自然でしよう。1万年も前の氷河期から静かに生き続けています。

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