造り物は伝統文化

更新日:2019年11月25日

造り物の見学風景

造り物の見学風景

但馬には「造り物(つくりもの)」という伝統文化があります。伝統芸能とよんでもいいでしょうし、民俗芸能とよんでもよいかもしれません。夏祭りの出し物として、町内会ごとに毎年制作されて、生活の一部となっています。見物人が見て楽しむ造り物を前に作り手と見物人の対話がはずむこともあります。 但馬地方の造り物は、7月から8月にかけての夏祭りにおける町内会の行事として制作され、個人住宅や店舗の一部を特設会場として、町内会ごとに力作が披露されます。豊岡市日高町江原・養父市八鹿町八鹿・養父市広谷・朝来市和田山町和田山・朝来市山東町梁瀬などで続けられています。

造り物の使用材料

造り物の使用材料

養父市八鹿町では「八鹿夏祭り」に9地区で制作されます。明治時代の初めに祭りの賑やかさと商店の客呼びをねらいとして始まり、100年余りの歴史と伝統があります。開催日は7月第2土曜日と日曜日です。もともと諏訪神社の例祭と川すそ祭りなどをあわせて八鹿夏祭りとなり、町をあげての大祭礼となったので「八鹿町民祭」(昭和35年)ともいわれてきました。

また、広谷の町では7地区で造り物が出されます。開催日は7月17日、18日です。広谷の観音祭りの行事の一つで、これは広谷地区の夏祭りです。昭和初期にはすでに狸を形どったものなど色々な造り物が登場し、多くの見物人が訪れました。いつから造り物が始まったか分かりませんが、明治時代には始められていたようです。この二つの地区には特徴があります。いずれも江戸時代後期から明治時代に栄えた市場であることです。つまり商売の町で昔から活気がありました。こうした八鹿と広谷の町の夏祭りで造り物が作り続けられています。造り物の材料は、家具や調度品、皿や漆器のほか、近くの山の木や竹、あるいはカバン材料・フィルム材料・はし・建具・金具・自動車部品なども使用して、その時代に話題の多かった建造物や人気者を作ることが多くなりました。

三重塔の造り物

三重塔の造り物

造り物は、だまし絵に例えられます。金具を利用して三重塔を造った場合を例にすると、近くで見ると単なる金具の集合体に見えるけれども、1メートルも離れて見ると三重塔が実物以上の存在感をもって建てられています。また、魚のお造りにも例えられます。刺身は新鮮な魚を切って皿に盛りつけただけの料理ですが、お造りは新鮮な魚を切って山水画のように、魚の切り身で情景を盛り付ける必要があるというものです。造り物の制作は、どのように見えるかという出来栄えを経験と実践で身につけて計算することが大切です。作り手が見学者との駆け引きの中で、だまし絵のような見栄えを競います。

  現在造り物が受け継がれている町は、全国で約50数か所しかないようです。但馬地方には多くの町で受け継がれているので、身近にあることが当たり前の夏の風物詩になっていますが、造り物は全国的にみると大変貴重な伝統芸能です。7月から8月に行われる但馬の夏祭りに、各地で多くの造り物が街角に並びます。

養父市の造り物を紹介しています。制作者として、また見物人として、造り物の文化を支えている養父市民の心意気を知っていただきたいと願っています。『あの造り物がよかった』という心に残る造り物を発見していただきたいと思います。夏の一夜の夢のように現れては消えていく造り物を写真で記録しています。

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