大型古墳の個別説明

禁裡塚古墳（きんりづかこふん）は、大薮古墳群の中心にくる古墳で塚山古墳と西ノ岡古墳の間にあります。南北35メートル、東西32メートル、高さ9メートルの墳丘があります。石室の全長は13.9メートルです。玄室（げんしつ）は、奥壁幅3.0メートル、高さ3.6メートル、長さ5.9メートルです。羨道（せんどう）と玄室の区別がある両袖式（りょうそでしき）の横穴式石室です。石室にはベンガラ成分をもつ赤い顔料が塗られています。羨道部の入り口には、石室を閉鎖するために石材を積み上げた石組みが残っています。

墳丘測量図をみると墳丘の中心部に玄室がくるように配置されており、谷側の墳丘基底部からみると4メートルほど高い位置にあたる墳丘の中腹に石室が開いています。

古墳の西側に近接して、裏塚古墳があります。禁裡塚古墳に接しており、周溝の中にある位置関係から、陪塚（ばいちょう）のような性格を持つ古墳とみられています。陪塚は、前方後円墳の敷地内のに作られた小規模な円墳が示す場合が多いです。つまり、大型の円墳である禁裡塚古墳の敷地の中に裏塚古墳が作られているようにみえます。

塚山古墳は、方形の基壇の上に作られた円墳と考えられています。方形の基壇は、南北・東西35メートルです。そこに直径35メートルの円墳が2段築成で作られています。墳丘の高さは、墳丘開口部にあたる東側で11メートルあります。この墳丘の中腹に石室が開いています。大変大きな古墳です。

この周囲には、山側からコの字形に幅10メートルから15メートルの谷地形があります。これは古墳を作るために用意された土地、兆域（ちょういき）と考えられています。このため実質的な塚山古墳は、南北60メートル、東西55メートルの方形の兆域をもつと考えられています。

この結果、塚山古墳は方形の兆域を確保した中に、方形の基壇を作り、その上に直径35メートルの墳丘をもつ2段築成の円墳として造営されたものと考えられます。奈良県の飛鳥地域では兆域を備えた古墳の存在が知られていますが、兵庫県下では大変珍しいものです。

横穴式石室の全長は12.1メートルです。玄室は、奥壁幅2.5メートル、高さ3.6メートル、長さ4.8メートルです。奥壁は3段につみます。羨道と玄室の区別がある両袖式の横穴式石室です。塚山古墳の特徴は、長さ4.8メートルある玄室の天井石が一枚の石で作られていることです。