国家戦略特区の効果の検証について

更新日:2021年04月28日

市では、特区指定から5年を経過した令和2年度、国立大学法人神戸大学の協力を得て、養父市の国家戦略特区の効果検証に取り組みました。担当したのは、神戸大学大学院経済学研究科の衣笠智子教授を代表とする研究チームで、特区の規制緩和を活用して参入した事業者への聞き取り調査や、市内農家へのアンケート調査、各種統計データの分析等により効果の検証が行われました。その概要についてお知らせします。

研究チーム

国立大学法人神戸大学 大学院経済学研究科 教授 衣笠智子 氏

同大学院農学研究科 研究員 衛藤彬史 氏(兵庫県立人と自然の博物館研究員)

同大学院経済研究科 研究員 安田公治 氏(青森公立大学講師)

調査の概要

特区事業者への聞き取り調査

特区の規制緩和を活用して参入・営農中の12企業を対象に、事前調査と訪問による聞き取り調査を行い、内容のうち量的、客観的に分類可能な項目について可視化のうえ比較検討。

市内農業者に対するアンケート調査結果

対象

市内の農家約3,200世帯

方法

調査票を郵送し、記入後同封の返信用封筒で返送。

回収率

38.1%

内容

農地の現状、農業経営、農業の六次産業化・IT化、農家の健康・生活、特区事業者(認知度、農業発展への期待)について等

統計資料等を用いた効果検証

統計データの分析

養父市の年次時系列データを用いて、特区指定の前後で耕地面積・就業者数・GDP(市内総生産)等の主要指標の傾向が変化したか否かについて検定。

実績に基づく事業効果の価値算出

事業者の企業情報および養父市が国家戦略特区の指定に伴い実施している企業活動に係る各種調査データを用いて簡易的に経済効果を試算・考察。

特区関係事業者への聞き取りを通じた特区の二次的効果

養父市における国家戦略特区のもたらす効果のうち、主として参入事業者がもたらす地域社会への波及効果について、参入事業者と関わりのある市内事業団体に対する聞き取りを通じ、補完的に捕捉。

考察結果

特区企業に対する聞き取り調査から、参入企業の多くで雇用拡大意向であり、今後の農業での雇用の拡大のモデルとして注目に値すると考えられる。また、ICT 機器等を積極的に導入予定であり、先端技術を導入して農業におけるイノベーションを行うためには、家族単位の農業では不十分な場合も多く、法人の組織力や資金力を生かして、積極的に行う必要があるだろう。また、農地を取得した企業が特に雇用拡大意向が高いことがわかった。この因果性については、慎重な検討も必要であるが、雇用拡大意向のある企業をより育成するためにも、企業が自分の農地を持つ、という選択肢を是非残していくべきであろう。

農地を取得した企業の意見から、農地取得は、農業を真剣にしているという、地域住民への意思表示や企業自身の本気度を上げるために有効であるということが分かった。また、農地への施設の建設や、特殊な肥料の使用など、企業独自の土地の使用がしやすいということが明らかになった。

農家アンケートの結果から、農家の高齢化が進行しており、農産物を販売していない農家の割合が約40%、農業機械を更新しない見込みの農家が約63%などと、農業にあまり積極的でない農家が多いことがわかった。また、農業機械に費用がかかることや農業で採算が取れないという悩みが多かったが、このような悩みは、企業が農業に参入することで、ある程度解決はできると思われる。さらに、農業の活性化の方策として、農産物の加工販売や都市農村交流などがあるが、そのような活動を行っている農家の割合がごく少ないことが見出された。また、農業にIT を効果的に取り入れることも、消極的である農家が多いことがわかった。養父市の農家の特区の参入の企業については、認知はされている傾向にあり、さほど反感はないという結果であった。また、特区の事業の取組として、耕作放棄地を利用することが養父市の農業発展に貢献につながるという意見が多かった。

アンケートの全貌から、個々の農家だけで、養父市の農業をけん引するのは、困難であり企業の力が必要であることが浮き彫りになった。

計量分析においては農業の維持・規模拡大を行う農家の要因を明らかにし、また養父市の特区事業に期待を持っているのはどのような農家なのかも明らかにした。さらに、本研究では、統計データを用い、養父市が国家戦略特区に指定された年以降に、就業者や、農地面積、課税所得等の主要な経済指標の傾向が変化したかを検証した。統計データを用いた検証より、養父市は、国家戦略特区指定後に、統計的に有意に就業者や耕地面積の減少を緩和させることができたことが見出された。また、実質課税対象所得や一人当たり実質課税対象所得の減少も、有意に緩和させることができたことが見出された。昨今の人口減少や経済の低迷により、それを打ち消してまでの成長は難しいにせよ、少なくとも、国家戦略特区に指定されたことで、そのマイナスの傾向を緩和させることができたことがわかった。これは、養父市長、市職員、そして、養父市住民一人一人の努力の賜物であるだろう。特区によって、プラスになったのは、参入企業だけではないだろう。特区の企業と取引のある企業にもプラスになった。

ほかにも特区事業の二次的効果として、特区関連事業者への聞き取り調査では、事業参入による直接的な効果だけでなく、既存の市内事業者との連携による経営上のシナジー効果や、特区指定に伴う注目や認知度向上によるPR 効果を感じている事業者が多いことが確認された。

以上より、養父市の国家戦略特区は、日本の中山間地域が抱える重要な問題の解決に貢献しているといえ、養父市の経済に大いに貢献していることが示された。養父市の国家戦略特区の取組は、今後の中山間地域での農業のモデルとなり、是非、その規制緩和を全国展開すべきだと思われる。

リンク

効果検証のレポート全文については、以下のリンクよりご覧いただけます。

この記事に関するお問い合わせ先

経営政策・国家戦略特区課
〒667-8651
養父市八鹿町八鹿1675
電話番号:079-662-7602
ファックス番号:079-662-7491