令和5年度 施政方針
令和5年2月27日、第116回養父市議会(定例会)に市長が説明した施政方針を全文掲載します。
はじめに
本日、第116回養父市議会定例会を開会いたしましたところ、議員の皆さま方におかれましては、ご健勝にてご出席賜り、令和5年度予算案をはじめとする市政の重要課題につきまして、ご審議いただきますことに感謝し、厚くお礼申し上げます。
それでは、令和5年度の各会計予算をはじめとする諸議案のご審議をいただくに当たり、市政運営につきまして、所信の一端と、重点施策の概要を申し述べ、議員各位並びに市民の皆さまにご理解とご協力をお願い申し上げたいと存じます。
トルコ・シリア大地震
2月6日にトルコ南部のシリア国境近くで起きた地震では、これまでにトルコ・シリアの両国で合わせて5万人を超える方が犠牲となり、平成23年に発生した東日本大震災を上回る大惨事となりました。多くの建物が倒壊する中、当初は大きな余震が断続的に発生し、また、重機などが不足していることもあり、救助活動が難航している状況が報道されています。阪神・淡路大震災や東日本大震災などの記憶が蘇り、大切な人や財産を失った被災者の方の心情を察するとき、心が痛み張り裂ける思いです。数百万人とも言われる被災者が家を失い、寒さの中、食料や水、温かく安全な住居などを待ち望んでいます。国際機関や各国政府、世界中の支援団体が支援を表明し、現地では必死の復旧活動が行われています。亡くなられた方々及びそのご家族に心から哀悼の意を表するとともに、被災者の方々がこの困難を乗り越え、一日も早く平穏な暮らしを取り戻されることを心から願っています。養父市においても義援金の募金箱を設置しておりますので、一人でも多くの皆さんの温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。
VUCAの時代のまちづくり
VUCAとは、ビジネス用語で、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の英語の頭文字をとった造語で、読み方は「ブーカ」、もしくは「ブカ」と読み、取り巻く社会環境の複雑性が増し、次々と想定外の出来事が起こり、将来予測が困難な状況を意味します。
昨年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は1年を経過し、これまでに多くのウクライナ市民が犠牲となり、侵攻の長期化でさらに増えることが懸念されています。犠牲となられた方々に哀悼の意を表しますとともに、大国の横暴に歯止めをかけるような国際世論が喚起され、国際秩序の安定と平和を取り戻し、一日も早くウクライナに平穏な日々がもたらされることを願って止みません。ウクライナへの義援金につきましても募金箱を設置しておりますので、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染症の流行) をきっかけに、グローバリゼーション(国際化)の進化とともにスピーディで自由に行われていた人や物の流れが滞るようになりました。さらにウクライナ侵攻による影響が重なり、世界的に資源エネルギーや小麦などの穀物の価格が高騰し、また、インフレの加速、円安・ドル高による物価高により、我が国の国民生活に大きな影響が表れています。世界は、こうした政情不安や、長引くパンデミック、国際紛争、気候変動、自然災害、生活困窮など、さまざまな問題に直面し、それは現在も続いています。2022年を表わす言葉の一つとして「パーマクライシス」という言葉が話題になりましたが、これはこうした「長期にわたる不安定な状況」を表わした言葉です。
こうした想定外のことが起こり、その解決に明確な方向性を見出せない社会、また、不安定、不確実、曖昧、不透明なVUCAの時代にあって、全ての人が生きづらさや孤立、孤独、悩みを感じやすい状況の中で、孤立せず、安心、安全で居心地のよい「快適」な生活が送れる「包摂社会」の実現を目指し、策定したのが「養父市まちづくり計画」であります。
岸田内閣の施政方針演説
1月23日に開会された第211回通常国会における、岸田首相の施政方針演説では、「歴史の転換期を前に、我が国が直面する内外の重要課題に対して道筋をつけ、未来を切り拓く」ため、「防衛力の抜本的な強化」、「構造的な賃上げ」、「投資と改革」、「こどもファーストの経済社会づくり」、「包摂的な経済社会づくり」等を重要課題とした基本方針が示されました。
地方創生について、観光産業では「観光地の魅力向上」、農林水産業では「更なる輸出拡大支援」に取り組むほか、地方経済の基盤である高速道路網の整備や地域公共交通の「リデザイン」、地方への企業立地支援、地方議会活性化のための法改正等に取り組むとされています。そして地方創生の基盤として「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を実現するため、光ファイバー、5G等のデジタルインフラの整備を着実に進めつつ、今後、本格的なデジタル実装を進めるとされています。養父市においても、国の交付金も活用しながら、行政サービスのデジタル化やメタバースなどのデジタル技術を活用した地域振興をさらに進め、養父市まちづくり計画で10年後の将来像として掲げた「豊かで持続可能なスマートヴィレッジの共創」の実現を目指してまいります。
こども家庭庁、こども家庭センターによる総合的支援
また、国においては、深刻な少子化、児童虐待やいじめ問題、貧困問題、子どもの幸福度の低さ、子育て負担の増加などの問題を解決するため、こどもの視点に立ち、子育て世代の思いを反映した政策を強力に推進する組織として、本年4月に「こども家庭庁」を設置するとともに、こどもの権利が法律によって守られる社会の実現を目指すための「こども基本法」が施行されます。
また、令和6年4月には、「こども家庭センター」の設置に努めなければならないとされる児童福祉法の改正が施行されることに伴い、養父市においても、令和5年度に「こども家庭総合支援拠点」と「子育て世代包括支援センター」を統合し、多様で幅広い支援事業の実施や子育て相談業務等のワンストップ化、更に教育と福祉を融合した施策の実施に取り組むための「こどもセンター」を設置いたします。
「日本一子育てをしやすいまち」の具現化と、「子どもたち一人ひとりの居空間」の創出のため、妊娠期から子育て期まで切れ目のない施策をより一層強力に進めてまいります。
国内経済動向
国の経済動向に目を向けますと、内閣府がまとめる月例経済報告(令和5年1月)には「景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している。先行きについては、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響や中国における感染拡大の影響に十分注意する必要がある。」とされ、個人消費については緩やかに持ち直しているものの、アジア向けの輸出が落ち込んでいることなどから、景気の基調判断が11か月ぶりに引き下げられました。また、日本経済は「失われた30年」と言われるようにバブル崩壊後から経済成長が停滞し、実質賃金についても1997年をピークに減少し、未だ回復していない状況となっています。岸田総理は、年頭会見で経済界に対して物価上昇分を超える賃上げを要請し、また、施政方針演説においても、持続的に賃金が上がる構造を作り上げるため、「労働市場改革」や「経済成長のための投資と改革」に全力を挙げると述べ、国・経済界を挙げて賃金の引き上げに取り組もうとしています。
兵庫県・県政改革方針と予算案
兵庫県においては、齋藤知事の号令のもと、昨年3月に策定された「県政改革方針」に基づき、「躍動する兵庫の実現」、「持続可能な行財政基盤の確立」、「イノベーション型行財政運営の実現」を基本方針として、組織・地方機関の見直し、事務事業の見直しなどが実施されました。
2月7日には、「SDGs、脱炭素化、大阪・関西万博などの動きを兵庫の原動力とし、新時代へ果敢に挑戦する予算」として、「新しい時代の力を育む」、「人の流れを生み出す」、「一人ひとりに寄り添う」を重点とする令和5年度予算案が発表されました。
2月13日から県議会定例会が開催され、予算案等の審議が行われているところです。
こうした国・県の動向等を見極めながら、市民にとりまして最大限の成果を生み出すことができますよう、令和5年度の市政運営に細心の注意を払ってまいりたいと考えています。
1 市政運営の基本方針
それでは、令和5年度の市政運営の基本的な考え方につきまして、述べさせていただきます。
令和4年度「居空間構想」への取組の総括
令和4年度は、養父市まちづくり計画の策定後1年目であり、 「やぶ2050 居空間構想」の実現に向けて本格的に歩み出すべく、タウンミーティングや各種会議等で計画の説明を行うことで、市民の皆さんへの浸透を図りながら、計画の実現に向けた取組を実施してまいりました。
計画で目指す「居空間」とは、「互いに理解し合う、協力し合うことを感じる空間」、「豊かな自然や環境への配慮と文化・伝統の「分かち合い」を感じる空間」、そして「先端技術で『出会い、つながり』を感じる空間」であります。
「居空間構想」の実現に向け、令和4年度に取り組んだ主なことにつきましてご報告いたします。
・デジタルグローバルへの対応
私たちが住む世界はデジタルグローバルの時代であり、デジタル社会とは、国籍、人種、思想、信条、世代、性別、障がい、教育、貧富など、あらゆるものの格差が解消される社会であります。デジタルは、これらの「際(きわ)」をなくすツール(道具、手段、手法)として、社会が抱える根源的な課題を解決し、平和と繁栄をもたらす無限の可能性を秘めています。
養父市においても、行政手続のオンライン化等を推進する「自治体DX推進事業」、仮想空間上でつながり人口の創出・拡大を図る「メタバース構築事業」、次世代を担う子どもたちが最先端のデジタル技術等を自由に使い、学び、未来を創造する力を育む「居空間構想拠点整備事業」など、デジタル技術を活用するための基盤づくりを進めてまいりました。令和5年度は、これらの基盤を活用して「出会い・つながり」を一層創出するための施策を展開します。
また、養父市民のマイナンバーカードの交付率は90%に迫っており、多くの市民の皆さんに保有していただくことができました。マイナンバーカードを使った行政手続の簡略化は、令和3年度から開始された国の「ぴったりサービス」においては36件、市独自の取組では12件の各種手続がオンラインでできるようになりました。また、戸籍・住民票等のコンビニ交付については、令和4年4月からこの1月までの10カ月間で4,000件を超える多くの利用がありました。今後も、マイナンバーカードの利活用の仕組みを構築することにより、市民の暮らしがより便利で快適、豊かになるよう努めてまいります。
・包摂社会の実現
生活環境や家族形態、地域社会の変化で「つながり」が希薄化し、人々が孤立や生きづらさを感じる状況の中で、「社会とのつながり」を処方し、個々が抱える問題を解決する「社会的処方」という概念をまちづくりに取り入れ、包摂社会の実現を目指す取組を始めました。
令和4年度においては、厚生労働省のモデル事業の採択を受け、医療との連携による相談支援の仕組みづくり、医療・介護・福祉の専門職や民生児童委員を対象としたリンクワーカー(住民の幸せのためにつながりをつくる人)に関する研修、地域コミュニティや社会資源(組織や人材)の情報収集と整理、地域における健康面・社会生活面に関するアンケート調査・分析などを実施しました。
これらの取組を通じて、人と人、人と地域がつながることの重要性をはじめ、社会生活面の課題を抱える方々へのアプローチや伴走支援のあり方などを再認識すると同時に、多様な住民主体の活動やコミュニティがそれらの課題解決につながることも再確認しました。令和5年度においてもこれらの取組を継続・深化させていきます。
・教育のあり方検討
教育分野においては、これからの変革の時代にふさわしい人材育成と、学びのあふれる養父市を目指し、昨年4月、「養父市教育のあり方検討委員会」を設置し、教育のあり方、子育てのあり方、教育施設のあり方について諮問しました。12月21日に答申を受け、乳幼児教育・学校教育のあり方や市民の学び、ひいては教育と福祉の連携、交通基盤の整備や人材の育成まで、未来の養父市の教育のあり方全般について、貴重な意見をいただきました。人づくりはまちづくりとの考えのもと15名の委員の皆さんが、養父市の10年後、30年後を考え、熱く真剣な議論を交わしていただいた結果がこの答申であると考えます。
令和5年度は、この答申を具現化するため、「養父市教育のあり方実施計画」を策定し、学校が地域コミュニティの拠点となるまちづくりを推進していきます。
・関宮地域局周辺整備(関宮小さな拠点整備事業)
過疎化、高齢化が進む中山間地域において、あらゆる世代が社会とのつながりの中で安心、快適に暮らせるよう、関宮地域の中心地である地域局周辺の再整備を推進します。
関宮地域局のエリア一帯を地域の人材や資源、活動をつなぐ「小さな拠点」と位置づけ、医療・保健・福祉・子育て・スポーツ・交流・商業・公共交通等、市民活動の核となる拠点を再整備することで、中山間地域の新たなモデルとなることを目指します。
令和4年度は、旧関宮地域局等解体工事の設計、土地造成の設計、旧関宮メリヤス改修工事の設計、運営体制についての協議等を実施するとともに、地域関係者やサービス事業者、若年世代、関宮学園の生徒など、多くの地域住民と意見交換などを重ね、地域住民が主体的に「小さな拠点」をつくるための機運の醸成を図りました。
・新型コロナウイルス感染症対策
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止とともに、感染拡大の影響を受けている地域経済や市民生活を支援し地方創生を図るため、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、デジタルクーポンをはじめ、デジタルヘルシーエイジング(健康加齢)事業、子育て世帯家計応援臨時給付金、住民税均等割課税世帯臨時生活支援給付金、商工業者融資事業、防災・災害対策事業、図書整備事業等に活用しました。また、コロナ禍において原油価格や電気・ガス料金を含む物価の高騰の影響を受けた生活者や事業者の負担軽減を図るため、原油価格・物価高騰分の交付金を活用して非課税世帯生活支援臨時給付金や農業生産資材価格高騰対策緊急支援補助金などの事業を実施しました。さらに、電力・ガス・食料品等価格高騰分の交付金については、社会福祉施設原油価格高騰対策給付金や飼料価格高騰対策緊急支援補助金に充て有効に活用しました。
市政テーマ
市の抱える喫緊の課題は、少子化、人口減少問題であります。人口減少の進行は、経済活動の縮小や地域コミュニティの衰退、あらゆる分野の担い手の減少、社会保障制度の給付と負担のバランスの崩壊など、様々な社会的、経済的な問題を引き起こすことになります。 持続可能な養父市を次世代へつなぐため、養父市全体で少子化と人口減少に歯止めをかける取組を強力に進めることが、今を生きる私たち世代に課せられた使命です。
これまで総合計画や創生総合戦略を策定しながら、少子化や人口減少の問題を解決するため、切れ目のない子育て支援や移住定住を促進する支援について多くの取組を実施し努力してきましたが、十分な成果を得るには至りませんでした。こうした状況を踏まえ、養父市まちづくり計画2050居空間構想では、「物質的・経済的な豊かさ」だけでなく、VUCAの時代であっても、これまで培ってきた文化、芸術、産業を活かして多様なつながりや新しい価値を生み出し、「快適」で心地良い空間を創出することで「心の豊かさ」を生み出していくこととしています。
また、まちづくりは、行政だけで成し遂げることができるものではなく、市民の参画が必要であり、養父市まちづくり計画のもと、市民の皆さんと共に歩むことができればと考えております。
こうした計画に込めた想いを引き継ぎ、「市政のテーマ」は昨年度と同じく、「未来の養父市をデザインする ~心ときめく快適な社会の創造~」といたしました。
また、養父市まちづくり計画で定めた、「市民」、「地域」、「公共」を市政運営の3つの柱とするとともに、これらの柱を横断的に貫く3つの重点的な政策として「デジタル技術の活用」、「子育て環境の充実」、「社会的処方の推進」を位置づけ、全部局で横断的に取り組むことといたします。
そして、これらの施策を進める行動指針として、様々な偉業を成し遂げた池田草庵、上垣守国をはじめとした先人から培った「挑戦心」と、誰一人取り残さない世界を目指す「SDGs」の考え方の下、市政運営を行ってまいります。
2 予算編成の基本方針
次に、令和5年度の予算編成の基本方針につきまして、ご説明申し上げます。
一般会計については、令和5年度の当初予算額は、前年度予算額184億3,000万円に対しまして、11.2%増の205億円を計上しております。
歳入につきましては、約半分を占める地方交付税について、2.4%増となる89億3,000万円を見込んでおります。このうち普通交付税にあっては、マイナンバーカード交付率に応じて割増しされる地域デジタル社会推進経費の増、水道事業に係る繰出基準額の増など、特別交付税にあっては近年の実績等に鑑み増額を、それぞれ見込んでおります。また、市税につきましては、エネルギー価格や原材料価格の高騰等により景気の見通しが不透明であることから減額となる見込みです。
歳出につきましては、マイナンバーカード利用創出事業、関宮地域局周辺整備事業、八鹿総合体育館・全天候運動場の長寿命化対策事業、出合診療所建設事業、南但スポーツセンター改修事業負担金などが主だったものとなっております。また、健全な財政運営を維持し将来世代の負担を軽減するため、地方債の繰上償還として水道事業会計繰出金を含め13億5,500万円を計上しております。
次に、特別会計についてでありますが、令和5年度当初予算額は、前年度予算額77億9,400万円に対しまして、ほぼ同額の77億9,100万円を計上しております。
企業会計についてでありますが、令和5年度当初予算額は、前年度予算額37億3,600万円に対しまして、29.2%増の48億2,700万円を計上しております。これは企業債の繰上償還として10億5,500万円を計上したこと等によるものであります。
この結果、一般会計と特別会計及び企業会計を合わせた予算の総額は前年度の当初予算総額299億6,000万円に対しまして、 10.5%増の331億1,800万円を計上しております。
令和5年度予算は、「居空間構想」の実現に向け、2050年を見据えた新しいまちづくりのため「包摂社会の実現」を掲げ、常に市民に寄り添い、様々な喜び、楽しさ、悲しみなどを共有し、これからも共に時間を過ごしていきたいという想いから、「With You・あなたのそばに」予算、といたします。
3 主要な施策
それでは、まちづくり計画に定める3つの柱に基づいて、その概要をご説明申し上げます。
(市民)
一つ目の柱「市民」について申し上げます。
多様性と個性あふれる持続可能な空間を創造し、世代を問わず“つながり”の中で学び合い、自らの選択をもとに自分らしく生活できる暮らしの実現に向けて取り組むとともに、市民が中心になって自然、歴史、文化を生かした新しいライフスタイルを確立していくための施策を展開していきます。
・社会的処方推進事業
市民の健康長寿、社会的処方を取り入れた人と人とのつながりによるウェルビーイング(良い状態が続くこと、幸せ、快適なこと)と、庁内及び関係機関との連携強化を図り対象者の環境や背景も踏まえた包括的・重層的な支援を行う体制の整備に取り組み、インクルーシブ(包摂的)な社会の構築を推進します。また、地域づくりコーディネーターにより福祉の地域づくりや市民活動を促進するとともに、コミュニティーナース(制度にとらわれることなく、まちに出て自由で多様なケアを実践する人材)の配置によりきめ細かなニーズの把握と相談支援体制の強化を図ります。
・関宮地域局周辺整備
関宮小さな拠点整備事業については、旧エイドホールの代替 施設の設計、整備エリアの土地の造成、旧関宮地域局の解体など を実施するとともに、令和4年度に醸成してきた機運をさらに 高めながら、社会的処方の観点から地域活動や市民活動を 活性化させるなど、地域間での人と社会のつながりを目指して、 住民が主体となった地域づくりを構築してまいります。
・高校生等医療費助成
現在、子育て支援施策の一環として0歳から中学生までの医療費について、所得制限を設けず、全額助成をしています。さらに、令和5年度からは高校生等の医療費についても同様に所得制限を設けず、全額助成とし、他の施策とも併せ子育て支援の充実を図ることで子育てしやすい環境を整えてまいります。
・養父市教育のあり方実施計画の策定
養父市教育のあり方検討委員会の答申を具現化し、養父市 まちづくり計画で目指す姿をより明確に見える化しながら、 子どもたちを真ん中に置いた、地域総がかりの学校づくりを 行い、未来の養父市に生きる子どもたちが、地域に誇りと 愛着を持ち、一人ひとりの個性を発揮しながら地域で暮らして いけるよう、「養父市教育のあり方実施計画」を定め、学校が 地域コミュニティの拠点となるまちづくりを推進してまいります。
また、市民の学びが子どもたちの学びを変える、子どもたちの 学びが養父市の未来を変える、と捉え、変化を恐れず、躊躇する ことなく、必要な部分は実施計画の策定を待たず取組を始めて まいります。すでに学校の長寿命化計画の見直しや、学童クラブ と学校施設の一体化に向けて現地調査に取りかかっています。 今後は、市民や保護者の皆さん、当事者である子どもたちとの 意見交流の機会も設け、市民にとって、また未来に生きる子ども たちにとって、養父市に学び育ち、生きることを誇りに思えるまちづくりを目指します。
・養父市ほっとステーションの開設
文部科学省の報告によりますと、小・中学校に在籍する児童生徒数が減少しているにもかかわらず、不登校児童生徒数は増加し、「不登校」は喫緊の課題となっています。不登校児童生徒の支援について、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、「社会的に自立する」ことを目指す必要があることや、個々の状況に応じた適切な支援を行っていくため、令和4年度にB&G財団から助成を受け「子ども第三の居場所事業」で施設整備を行った「養父市ほっとステーション」の運営を開始し、学校に馴染めないなどの悩みを抱える子どもへの支援を行ってまいります。
・文化芸術(公民館・ホール、YB公園整備)
やぶ市民交流広場と各公民館・ホールでは、養父市で普段触れることのできない質の高い、音楽や演劇などの文化芸術を引き続き提供し、生きがいや楽しみを創出することで、心豊かで魅力あるまちづくりの実現を目指します。また情操教育の一環として、子どもたちがこうした芸術に触れやすい環境を整えます。
やぶ市民交流広場の公園については、年齢や障がいの有る無しに関わりなく、誰もが一緒に過ごし、遊び、楽しむことができる「インクルーシブ公園」として整備を計画します。
・八鹿総合体育館、全天候運動場長寿命化
八鹿総合体育館については、昭和61年に設置後37年が経過し、また全天候運動場についても平成6年に設置後29年が経過し、いずれも老朽化が進んでいます。両施設は、年間を通して市民のみならず、スポーツ大会や合宿など市外利用者を含め幅広く利用されていることから、利用者の安全性と利便性を向上するための長寿命化対策工事を行い、令和7年度に都市公園施設と全天候運動場を一体的に指定管理に移行することを目標に早期着工、完成を目指してまいります。
(地域)
次に、二つ目の柱「地域」について申し上げます。
地方創生の取組の中で養父市への熱い思いをもって移り住んでこられた多くの移住者や企業、養父市を支える全ての人々とともに、“つながり”や“支え合い”を育む包摂的で開かれた地域社会が形成できるように取り組んでまいります。
・「日本一農業をしやすいまち」への基盤整備
地域または集落ごとに将来の農業のあり方や、農地の効率的かつ総合的な利用に関する目標等を話し合って「地域計画」(人・農地プラン)を定めることが義務化されたことに伴い、市としても「地域計画」の策定を支援するとともに、中心となる経営体への農地の集約や、担い手の確保・育成、耕作放棄地再生などの取組を進め、農地利用の最適化に努めてまいります。また、大塚地区や九鹿地区をはじめとした農業の基盤整備に関する事業や、有害鳥獣防護対策を行うことによって、生産性の向上やコストの縮減を図り、農業をしやすいまちづくりを進めてまいります。
・人と環境に優しい農業ビジョンの実践
「人と環境にやさしい農業ビジョン」で示す取組の方向性に基づき、環境に配慮した農業への転換を促進するとともに高付加価値農業の拡大を図ってまいります。また、環境への配慮や生産性の向上に資するスマート農業技術の積極的な活用を後押しし、持続可能で、次世代につなぐことができる農業を推進してまいります。
・自伐型林業の担い手育成
林業の担い手を確保し、放置された山林を価値ある資源として活用するため、養父市では平成30年度から自伐型林業の普及を行ってまいりました。令和5年度は、研修の受講生等を対象に、より高度で実践的な技術を習得するためのスキルアップ集中研修を実施します。また、自伐型林業を志す地域おこし協力隊の活動に伴走的な支援を行い、更なる担い手の確保と育成を進めます。
・養父市版ワーケーション
国の成長戦略では、スタートアップの育成は日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵と位置づけています。 このため、2022年をスタートアップ創出元年とした5ヶ年計画が策定され、大規模なスタートアップ創出に動き始めました。
養父市においても、令和3年度から取組をスタートさせた「養父市版ワーケーション事業」において、企業や事業所単位での受入れはもとより、個人起業家など幅広い形でワーケーションを支援する仕組みを構築しており、その結果、市内企業とのマッチングやコラボレーションにより、新たな企業が生まれようとしています。令和5年度 は、これらの取組を強化する事業としてスタートアップに着目した「スタートアップ・イン・レジデンス事業」を追加し、養父市に滞在しながら人の交流、アイデアの交流ができる場所や機会を創出するとともに、ビジネスプランコンテストの開催など、スタートアップとの関わりを強めることによりワーケーション事業の推進に積極的に取り組んでまいります。
・地域と共に育てる芸術文化
若手チェリストの登竜門として国内外で高く評価されるビバホールチェロコンクールは来年度に第15回を迎え、節目を記念して新たな賞を創設するとともに、5月にプレイベントを開催するなど、チェロの魅力を身近に感じていただく機会の創出に取り組みます。
また、平成15年から続く「せきのみや子ども歌舞伎」公演は、来年度に第20回目を迎えます。少子化などにより演じ手の子どもの確保が課題となっているため、関宮学園での踊りの授業やDVD鑑賞会の実施、ホールでの歌舞伎公演への無料招待などにより、子どもの歌舞伎への興味、関心を高めるとともに、後継者の確保に努めてまいります。また、葛畑三番叟衣裳の新調、YBホール内の定式幕(じょうしきまく)の設置等を行い、せきのみや子ども歌舞伎の維持存続、発展を目指してまいります。
(公共)
次に、三つ目の柱「公共」について申し上げます。
多様化、複雑化、高度化する地域課題や市民ニーズに加え、人口 減少の急速な進展による経済の縮小、地域産業の担い手不足など、 行政を取り巻く環境が厳しさを増す中、全ての公共サービスを自治体が担うことは困難となりつつあります。このため、官民協働の下、地域住民や市民活動団体、企業、NPОなどの多様な主体とともに、公共サービスの担い手の育成や支援に努めてまいります。
・自治体DXの推進
自治体DX等の早期実現を目指す上で極めて重要となるマイナンバーカードについては、今後、市民が便利で安心・快適な社会生活を送る上で重要な社会的インフラ(社会的基盤)であることの理解を求める努力を惜しむことなく続け、交付率100%を目指します。更に、一層市民が申請しやすいような手続きの方法等を検討します。
また、マイナンバーカードを利用し、オンライン投票システムや、災害時の避難所における名簿や健康・医療情報の管理なども可能となる機能を整備し、便利で安心・安全な市民生活を支援します。
この他にもデジタル技術の活用を進め、デジタルヘルシーエイジング(健康加齢)事業のほか、市の大部分を占める山林部において航空レーザー測量データのAI(人工頭脳)解析を行い、得られた森林資源情報や境界候補図データを一元的に管理する「森林経営管理システム」の構築を進めてまいります。なお、作成した境界候補図データは、リモートセンシング(遠隔地から感知器を使って測量等を行う)技術を活用した地籍調査にも活用いたします。
また、市税の業務においては、地方税統一QRコード等を用いた仕組みを導入し、クレジットカードやペイ払い等による納付手段の多様化と電子納付の対象税目の拡大を実施するとともに、たばこ税等の申告や納税通知の電子化により、更なるデジタル化を進めてまいります。また、図書館では、令和4年度に整備した新図書館システム及びマイナンバーカード連携システムとともに、自動貸出機や図書検索機の導入によりサービスの向上を図ります。
・メタバースの拡充と活用
インターネット上の仮想空間である「メタバース」の中に、つながりを創出するコミュニティづくりの場を構築し、養父市の魅力発信と「つながり人口」の増加を図るため、昨年6月、吉本興業株式会社との連携により「バーチャルやぶ」をオープンしました。これまでに約8千人のユーザーがバーチャルやぶを訪れ、観光案内所オープン記念イベントなどで多くの交流が生まれました。これまでは吉本興業のタレントやクリエーターのつながりを中心に、普段からメタバースに親しんでいる愛好家をユーザーとして誘導してまいりましたが、令和5年度はスマートフォンでも利用可能なシステムを構築します。これにより、市民や事業者が広く利用しやすい環境となるため、産業・経済や医療、教育分野での利用などあらゆる可能性を視野に入れて、まちづくりや地域課題の解決への活用を検討してまいります。
・グリーントランスフォーメーションの推進
グリーントランスフォーメーションとは、「環境に配慮した先端技術を使い、産業構造を変革する取り組み」のことですが、養父市においても、養父市環境基本計画に基づき、地球温暖化防止対策として、省エネ住宅や電気自動車の充電インフラの普及を支援し、二酸化炭素の排出削減につながる取組を加速化してまいります。また、カーボンオフセット(社会・経済活動を行う上で排出する二酸化炭素などの地球温暖化ガスの抑制に努めるものの、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること)の取り組みを強化するため、養父市の森林資源を活用
した「J―クレジット」の販売に取り組むとともに、更なるクレジットの取得に向け、森林経営計画の策定や関係者との協議・調整を進めます。
・持続可能な地域公共交通のあり方の検討
令和4年度に、JRローカル線の維持・活性化のための利用促進策等の検討に当たり兵庫県が設置した「JRローカル線維持・利用促進検討協議会」や、該当路線ごとに組織されたワーキングチームにおいて、沿線自治体、利用者団体、JR西日本などが利用促進策や維持・活性化等に向けた議論を行ってまいりました。養父市は山陰本線(梁瀬~鳥取間)の議論に加わり、単なる利用促進策にとどまらず、将来を見据え、持続可能な公共交通のあり方を模索していくために、但馬地域において法人格を有する「交通連合」を沿線自治体と事業者などで組織し、事業運営のあり方について、同列の立場で自治体が関与できる仕組みづくりを行っていく必要性を提案いたしました。
この各路線の維持・利用促進に向けての議論は令和5年度以降も継続されることとなっており、今後も、但馬地域における持続可能な公共交通のあり方について、沿線自治体や交通事業者等と連携を深めながらしっかりと方向性を議論してまいります。
また、養父市においても、地域の日常の移動手段について、関宮小さな拠点を核とした交通ネットワークの構築をはじめとして、路線バス事業者や自家用旅客運送事業者等との勉強会などを通じて幅広く検討しているところです。これらの動きを踏まえながら、近未来の持続可能な公共交通のあり方を模索し、提案してまいります。
・遊休地跡地活用計画の策定
市内にはまだ有効に活用できる未利用地が存在することから、令和4年度に策定した都市計画マスタープランに基づき、過疎地域における豊かな生活、多様な暮らし方、働き方の実現に向けて、デジタル技術の基盤が整った「情報先端子育てモデル地域」開発計画の検討を進め、若者の移住定住を促進します。
・空き家対策
年々増加する空き家は、地域の生活環境に悪影響を及ぼす可能性がありますが、適切に管理することで地域の貴重な資源となり得ます。空き家対策に関する事業として、空き家バンク制度や空き家の購入者への補助制度、養父市版ワーケーションへの積極的な活用などにより移住者等に利活用を促すとともに、周辺住民に悪影響を及ぼす可能性がある空き家の対策として、空き家対策に取り組む地域への補助金制度や、家屋の一部に腐朽・破損がある危険な空き家の解体に対する補助制度を創設します。
・下水サーベイランス
下水道が持っている防疫、公衆衛生、環境保全の本来的機能を再度検証し、資本価値を最大限発揮する取組の一環として、汚水中のウイルス濃度を計測し、養父市内の新型コロナウイルスの感染流行状況を把握する「下水サーベイランス事業」について、内閣府が行った
令和4年度の実証事業終了後も、市の事業として引き続き実施します。解析したデータに基づき、市内の感染状況を市民に広く周知することで、感染予防の啓発を継続してまいります。
社会資本の根源的価値を見直す発想は、下水道にとどまらず、他の社会資本においても、それらの社会資本が持つ本質的、潜在的価値の発現、創造に活用できる考え方でもあります。今回の下水道における疫学的活用はそれらのモデルになる取組であり、まさしく私たち行政に求められている、発想の転換、既成概念打破につながるものです。
市政運営全般においてもこの様な柔軟な思考をもって当たり、市民の期待に応えられる、躍動的な行政運営を行いたいと考えています。
・インフラ長寿命化
市民生活を維持する上で重要な河川、水路、道路、橋梁、情報設備等のインフラ施設の整備につきましては、重大な破損や損傷等により市民生活に影響を与えないよう計画的に実施していきます。令和5年度は、内水害を防止する都市下水施設の長寿命化事業に着手するとともに、市道の長寿命化を集中的に実施してまいります。また、上下水道施設の長寿命化対策につきましても、加圧ポンプ所制御盤、浄水場膜ろ過設備等の更新、浄化センターの脱水機更新、電気設備更新、中継ポンプ更新等を実施いたします。
・総合防災訓練、リーダー育成講座
近年、自然災害は大規模化、多発化しており、全ての人が安全・安心に住みつづけられる災害に強いまちづくりを進める必要があります。市民の防災意識の高揚並びに関係機関との連携を強化するため、4年ぶりとなる「養父市総合防災訓練」を実施するとともに、養父市の将来を担う中学生を対象に「養父の未来づくり・地域貢献リーダー育成講座」を引き続き開催し、養父市の未来に貢献できる人材の育成を進めます。
(横断的・一体的に取り組む施策)
令和5年度の市政運営の重点政策と位置付ける「デジタル技術の活用」、「子育て環境の充実」、「社会的処方の推進」の3つについて述べさせていただきます。この3つの重点政策は、全部局が横断的かつ一体的に取り組み、それぞれの事業を立体的、有機的につなぎ、融合を図ることで、より一層の行政効果を上げることができます。
まず、「デジタル技術の活用」についてです
最先端のデジタル技術を取り入れ、市民の利便性向上や生活の質の向上を図るため、マイナンバーカードの利活用の促進、自治体DXの推進、メタバースなどを活用し、デジタル技術の恩恵を、誰一人取り残すことなく、全ての市民に早期にお届けできるよう取り組んでまいります。
2つ目の「子育て支援の充実」についてです
「日本一子育てをしやすいまち」を具現化し、将来を担う大切な子どもたち一人ひとりの多様な学びの場を提供いたします。また、妊娠から出産、育児、医療、教育、進学に至る全ての場面において、切れ目のない支援を確立し、安心して子育てができる環境づくりに取り組んでまいります。
3つ目の「社会的処方の推進」についてです
社会的処方の考え方を基に、医療・福祉・コミュニティをはじめとする様々な分野を融合させ、人と人、人と地域がつながり、属性・世代を超えて誰もが支え合い、いきいきと暮らせるまちづくりを強力に推進していきたいと考えています。
特に住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的かつ重層的支援体制を構築するため、「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を関係団体と協働しながら充実・強化してまいります。
また、令和4年度から実施している医療機関との連携はもちろん、社会的処方の要となるリンクワーク機能充実のための「学びの場」を市民にも広げていきます。あわせて、市民主体の活動を促進させるための支援を充実させるとともに、社会的包摂機能を持つとされている文化・芸術などをうまく取り入れながら取組を進めます。
(新型コロナ対策)
次に、新型コロナウイルス感染症の対策についてです。
新型コロナウイルス感染症は発生から3年が経過し、第6波、第7波と新規感染者数が増加する一方で、昨年7月15日には政府の新型コロナ対策の「基本的対処方針」が改訂され、新たな行動制限を行わず社会経済活動をできる限り維持すること、新型コロナウイルスと共存しつつ平時への移行を慎重に進めることなどが示されました。 養父市でも、地域の祭り、文化祭、避難訓練等が再開され、地域の活力が戻りつつあります。また、コロナ禍におけるアウトドアブームの加速によって若杉高原や天滝、ハチ高原等にも多くの観光客が訪れるようになっています。3月13日からは、マスクの着用が自己判断とされること、5月8日からは、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への移行が決定され、行動制限が個人や事業者の自己判断に委ねられることになり、市民一人ひとりの状況判断が難しくなることが予想されます。このため、今後は下水サーベイランスの結果等も活用しながら、市民、事業者が自らの行動について適切に判断できるよう、情報提供や基本的な感染対策の呼び掛けを継続します。
4 市政運営の執行体制
次に、令和5年度の執行体制について申し上げます。
市民起点によるまちづくりを行政組織理念に掲げ進めている行政経営(マネジメント)については、令和4年度から行政経営改革プランを作成し、部局の経営計画をタウンミーティングやホームページ等で周知し、より確実な成果が出せるよう取組んでまいりました。 令和5年度は、「最適市民価値の共創」に向けて、幹部職員を中心に行ってきた取組を全職員に実施しマネジメントをより一層浸透させまいります。
市民とともにまちづくりを進めるためには、市民から信頼される職員である必要があります。そのためには、所管業務に精通することはもとより、行政経営能力、折衝・対応調整能力、政策立案能力、課題解決能力など総合的な能力を備えることが求められます。
また、職務に対する誇りと責任を持って、職務に関する専門的な知識や技術を主体的・積極的に習得し、自身の職責を果たすことが必要です。こうした能力や専門性を磨き上げるための研修機会を拡充し、人材育成計画に目指すべき職員像として掲げている「常に次の展開を見越しチャレンジできる職員」を育成します。
妊産婦や乳幼児の保護者を支援する部署と虐待や貧困など、問題を抱えた子どもや保護者を支援する部署を一体化し、全ての妊産婦、子育て世帯、子どもへ一体的に相談支援を行うため、「こどもセンター」の機能を有する部署として、「こども・夢・えがお部」を設置します。
また、時代に即した行政需要に的確に対応するため、組織や制度、行政運営のあり方を見直す行政改革については、行政改革推進委員からの答申を受けて、現在第5次養父市行政改革大綱を策定中です。令和5年度は新大綱の基本方針にのっとり、引き続き決意と覚悟をもって行政改革に取り組みます。
さらに、地域課題は多様化、複雑化、高度化しており、その解決に当たり専門的な見識が必要となる場合には、大学や研究機関、専門的アドバイザーなどの助言、連携強化により効果的な解決策を見出していきます。
むすびに
以上、市政運営に関する所信の一端と、令和5年度当初予算案などについて申し上げました。
2050年の養父市をデザインする
養父市まちづくり計画で目指す「居空間構想」を実現するための行動は、2050年の養父市をデザインすることから始まります。
昨年12月には、女性のみの参加によるタウンミーティング「はじまりのカフェ」を実施し、参加者同士で養父市の未来について語り合うという試みを行いました。また、昨年オープンした「バーチャルやぶ」では、世界中の方と養父市が仮想空間上でつながり交流できることが示されました。今後も、市民起点のまちづくりを実行するため、一人でも多く、いろいろな立場の方と養父市の未来を語り合う場を設けたいと考えています。市民の皆さんにおかれましても、是非とも積極的に参加いただきますようお願いいたします。
いまだかつてないほど激しい変化が起きるVUCAの時代の中で、社会が持続可能な発展を続けるためには、未来を予測し新しい価値を生み出し続けることが欠かせません。
松下電器産業株式会社の創設者・松下幸之助は、「かつてない困難からは、かつてない革新が生まれ、かつてない革新からはかつてない飛躍が生まれる」と述べています。VUCAの時代に人口減少、少子化に立ち向かうことは、これまで経験したことのない大きな困難ですが、革新を生み、飛躍を生むために、明るい未来を創造する努力を地道に、着実に続けることが必要だと考えます。
養父市の挑戦
1月25日にNHKで放送された「英雄たちの選択」という番組で、養父市の偉人である上垣守国が、明治時代に生糸を巨大産業にした「英雄」として描かれました。守国は、全国各地の養蚕家と交流 しながら養蚕技術を記録して養蚕の知見をまとめた「養蚕秘録」を出版しました。そして、その「養蚕秘録」は、東インド会社のシーボルトによってオランダに持ち込まれ、ヨーロッパの養蚕業の発展、振興に大きく貢献しました。
上垣守国が著した「養蚕秘録」は、まさしく近代日本における先進技術輸出の第1号、先駆け、として高く評価され、その名は長く歴史上に位置付けられるものであります。
生涯をかけて研究した養蚕技術を世に広め、貧しい農民の暮らしを養蚕によって豊かにするため、「養蚕秘録」を出版し技術を共有することを決断した守国の思いは、国家戦略特区や社会的処方の推進、下水サーベイランス、関宮小さな拠点など、中山間地域のモデルとなる事業に取り組む「養父市の挑戦」に通ずるものがあります。
市長室に「新政厚徳」書かれた扁額が掲げられています。
昭和の軍国主義社会において、身の危険をかえりみず、困窮・疲弊する国民生活配慮の大切さを訴え、国会において、はびこる無謀な軍国主義社会への警鐘を鳴らした、但馬が産んだ偉大な民主主義政治家、斎藤隆夫の揮毫によるものです。
「新政厚徳」という言葉は明治維新後、新政府が政治の大綱として掲げた理念で、西南戦争で西郷隆盛の薩軍のスローガンとしても用いられ、その意味するところは、「厚い徳をもって、新たな政(まつりごと)を行うべし」というものです。
私は、「いかような政治、行政も、しっかりと市民の立場に立ち、考え、市民に寄り添った、政治、行政を行わなくてはならない。また、絶えず、改革、革新の新たな気持ちを忘れることなく、挑戦の心を持って、ものごとに立ち向かっていくことが大切である」、と自分勝手に解釈しています。
日々、この額を見ながら、気持ちも新たに、決意を持って、市政運営に邁進いたします。
令和5年度は、市政20周年に当たる令和6年度に向けて羽ばたく年であります。様々な市民参加の形を模索しながら、市内、市外の多くの方と養父市の未来をデザインし、「居空間構想」の実現のため「今、起こすべき行動」を見定めながら、少子化や人口減少問題に挑戦し続けてまいります。
議員各位をはじめ、市民の皆さまのなお一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、令和5年度の施政方針といたします。
「With You」、養父市は、いつも、「あなたのそばに」います。
令和5年2月27日
養父市長 広 瀬
更新日:2023年03月03日