まちの文化財(2) 古生沼の湿原植物

更新日:2019年11月18日

古生沼の保全作業

                  古生沼の保全作業

古生沼とその向こうにある古千本杉

      古生沼とその向こうにある古千本杉

 

氷ノ山は兵庫県では最も高い山で、標高は1510メートルあります。山頂は鳥取県若桜町と兵庫県養父市の境界となっています。

この氷ノ山の山頂から東側に200メートルほど下った標高1460メートル付近に、古生沼があります。幅30メートルで、長さ60メートルほどの湿原です。表面にはミズゴケ類やツマドリソウ、ヤチスゲなどの北方系植物が生き残っています。

平成16年6月13日、南但馬の自然を考える会など24名が、保全作業のために氷ノ山に登りました。ここには、「古生沼の高地湿原植物群落」と呼ばれている兵庫県指定文化財の天然記念物があるからです。

考える会の会長さんは、「古生沼にはヤチスゲ、エゾリンドウ、ツマトリソウ、アカモノなどの氷河期の植物が生き残っています。樺太や日本アルプスに行かないと見ることができないものです。氷河期の植物が奇跡的に生き残っている古生沼は、湿性植物の宝庫です」と解説しました。

しかし氷ノ山の山頂東斜面は、多くの登山者によってトイレ場になっています。人が排泄した栄養が古生沼に注いで、環境が富栄養に変化していると言います。古生沼にある氷河期の植物は貧栄養で生育する植物なので、環境の変化で消滅しかけています。保全作業は、山頂の東斜面にロープを張って、この付近でトイレをしないように登山者の協力を求める看板を立てました。

また氷ノ山の山頂では、草木が育たない裸地が広がっています。環境の変化で保水力が衰え、古生沼の水が極端に減少しています。氷ノ山の寒冷な厳しい自然環境が守ってきた氷河期の植物が消滅する危機にあります。

牧野富太郎博士は、昭和12年8月8日に氷ノ山に登りました。この時、ヒョウノセンカタバミを発見しています。日記には「三角点有り、小憩山頂付近を採集す、少し下りて湿地あり、ヤチスゲ生ず。また矮小となりし天然杉あり、オオヤマリンドウあり」と書いています。

近畿地方だけでなく、西日本でも古生沼でしか見られないヤチスゲの穂や、エゾリンドウの小さな青紫色の花が、これから咲き出します。関西だけでなく西日本でも、氷河期の植物を守り育てているのは、兵庫県の最高峰となっている氷ノ山たけです。大切に見守ってください。

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